SSブログ

GWと和歌山と愉快な仲間達(10 完結編) [愉快な仲間達]

【和歌山IC~京都】
和歌山ICから高速に乗り、元来た道を京都まで引き返す事に。途中、吹田SAに寄ったが、皆がTを期待のこもった目で見た。Tはそれを察知すると、「アホかっ!もう唐揚げはムリじゃっ。っていうか売ってなかったし!」と言っていた。この旅行を通じてすっかりT=唐揚げという図式が完成してしまった感がある。このSAには岸和田のようなスタンプは無かったようでTはさらに残念そうであった。帰りの車中では、Oはハシャぎ過ぎたのか寝てしまった上に、TとKは明日から仕事があるせいか明らかにテンションが下がってきていたので、無言の状態がしばらく続いた。眠くなってきたKは「おい。アレかけよう。」との事。私はまたもや「長渕剛 BEST~空~」を取り出した。私とKは何故か耳に残った「猿一匹、唄えば侍」だけを無限にリピートしていた。Kは途中でテンションが上がってきたのか、明日が嫌過ぎて吹っ切れてしまったのかは定かではないが、大声で叫ぶように唄っていた。

猿一匹、唄えば侍 猿一匹、唄えば侍~♪

やがて車はT邸付近に到着(←展開早っ)。コインパーキングに車を止めると、打ち上げと称していつかの三条木屋町(以前の記事  京阪の桜と愉快な仲間達(前編) 参照 )にタクシーで繰り出した。歩きながらどこで食べるか熟慮した上、焼肉「ももじろう」へ。焼肉を食べながら今回の旅を振り返ってみたりした。


<たむけんが偵察に…?>

焼肉屋を出た後、ほろ酔い気分の我々は当然の如くジャンボカラオケに。カラオケでは、ある種今回の旅のテーマソングであったとも言える長渕の曲が人気だった。

ピーピーピー ピーピーピー・・・♪
好きです 好きです 心から~♪
よーそろーおぉーよぉーそろーおぉー 生きて 生きて 生きて 生きまくれぇーいっ♪
あーあぁ幸せのとんぼがほら~♪

途中Kのテンションが上がり、トータルリコールばりに腹を突き出して歌い始めると、Oがすかさずマイクを向けていた。Oはおそらくテンションが上がっていたのだろう


<熱唱するKと腹>


<Oマイク向けるの図>

そしてあの曲…。
まっとうに生きていくこと、明日の仕事のこと、将来のこと…全てを振り切るようにして
我々は心ひとつに合唱した。

猿一匹、唄えば侍 猿一匹、唄えば侍~
猿一匹、唄えば侍 猿一匹、唄えば侍~
猿一匹、唄えば侍 猿一匹、唄えば侍~
猿一匹、唄えば侍 猿一匹、唄えば侍~
さ~るいーっぴきぃー うぅーたぁえばさむらーいいっヒッヒッヒぃーっ!

                                     (GWと和歌山と愉快な仲間達 完)


GWと和歌山と愉快な仲間達(9) [愉快な仲間達]

【紀三井寺】
紀三井寺に到着。

<室町時代に建立された国指定重要文化財の楼門(修繕中)>

拝観料50円を支払うと、以下のしおりをもらったが、なかなか有難い事が書いてあった。



楼門をくぐると、231段の急な階段があり、予想外の展開。Oはまたもや目を輝かせ先陣を切って急な階段を登っていった。おそらくテンションが上がっていたのだろう。我々も気合で登る事にした。



ちなみにこの坂は結縁坂(けちえんざか)と言われており、縁結びのいわれがあると楼門のところにあった看板で知っていたので、Tに「俺がTを背負って登ったら、さぞご利益があるんとちゃうか?」と軽口を叩くと、「Sにはムリやわ!ハハハ」と大らかに返されてしまった。背負うのがムリなのかご利益がムリなのかについてはあえて追求し無い事にした。


<結縁坂のいわれ>



坂を登り切ると、一望。いい景色。


紀三井寺 - referred to Wikipedia -
和歌山県和歌山市紀三井寺にある仏教寺院。宝亀元年(770年)、僧・為光により開基されたと伝える。宗派はもと真言宗山階派に属したが、現在は独立して救世観音宗総本山を名乗る。本尊は十一面観音西国三十三箇所第2番札所。

西国三十三箇所について - referred to 紀三井寺HP -
西国巡礼の始まりについて、次のようなお話があります。奈良の長谷寺(西国八番)にいた徳道という高僧が急な病気でお亡くなりになり、冥途の入り口で閻魔大王に出逢います。「悪いことをする者が増えて地獄は今、定員オーバーじゃ。汝は特に許すから、娑婆(現世)へ戻り、人々を地獄へ来させぬように、三十三ヶ所の観音霊場を広めよ」閻魔大王はこう言うと、徳道上人に三十三ヶ所の宝印を託しました。しかし当時の人は、なかなか信じてくれません。しかたなく上人は宝塚の中山寺(西国二十四番)に宝印を埋めて、使命を後世に託しました。
 西国巡礼が本格的に始まるのは、花山法皇が宝印を掘り出された二百七十年のちのことだとされています。
「西国三十三ヶ所巡礼」とは、近畿・東海の二府五県にまたがる観音さまの霊場を巡拝する作法で、これはわが国における最古の巡礼道です。後に、弘法大師の事跡を訪ねる「四国八十八所遍路道」や関東の観音霊場「坂東三十三所観音札所」「秩父三十三所観音札所」が編まれ、さらに全国津々浦々に大小札所が建立され来たりましたが、西国札所はそのさきがけとなったのでした。札所の数、三十三は『観音経』(『妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五』)に、「観音様は三十三種に身を替えて、私たち衆生を済度(救済)下さる」とあるのにちなんだことかと存じます。巡礼の信仰では、幼い子供達、すれ違う人、いがみ合う喧嘩の相手ですら、観音様のご分身かもしれません。何かを悟らせようとの縁在る出逢いなかもしれないのです。



参拝を終えると我々は結縁坂を下り、和歌山ICに向けて出発した。和歌山城を横目にICに向かっている際、県立美術館で竹久夢二展が行われている事を発見し、今度行ってみようと思ったりした(以前の記事 竹久夢二展(和歌山県立近代美術館)参照)。(10につづく…)


GWと和歌山と愉快な仲間達(8) [愉快な仲間達]

【有田市~和歌山市】
逢井漁港のトンネルを無事通り抜けてホッとしていたのも束の間、後の下り坂(これも一通並に幅が狭い)で、続けざまに3台の対向車。3台とも逢井の住人らしくおばあさんが運転していたてりしてビックリする。和歌山ナンバーではないKのCivicは明らかに余所者なので、気を遣ってくれてか道を譲ってくれて助かった。おばあさんのドライビングテクニックは間違いなくKより上だろう…。下り坂を降りると、国道に戻りそのまま有田市を後にした。途中Tが「なぁそろそろ昼飯食べたいんやけど…昨日漁亭で昼は唐揚げ定食があるって書いてあったんやけど…」と婉曲的に言ってきたが、皆に飲み過ぎでしんどいからムリムリっと一蹴されていた。それを受けてTは「そうやよなぁ。まさかな…。もちろん冗談やでっハハハ…」と言っていたが、余り説得力が無かった。「じゃあ何にしよーか昼食は。あー腹減った」という事でひとしきり昼食談義をした後、和歌山ラーメンを食べようということになり、和歌山市内の人気店「丸宮」へ。紀三井寺球場の駐車場に車を止め、徒歩3分で到着。



店内は満員だったのでしばらく待ってから入店。ラーメンとチャーハンを注文。



昔ながらの中華そばという感じの硬派なラーメンでなかなかおいしかった。


和歌山ラーメンには大きく分けて2つの系統がある - referred to Wikipedia -
・車庫前系(醤油味をベースにした豚骨醤油味)
味は見た目に対してすっきりしており、醤油のコクと香りが引き立つ。本家は「丸高」という店で、地元にはのれん分けの店舗も含め、大半の中華そば専門店がこのスタイルである。故に地元の者らが和歌山の中華そばといえば、この味を連想する者が多い。この系統には「丸木」、「丸京」、「丸宮」、「まるやま」などの有名店があるが、これらはほとんど屋号に丸が付く。車庫前系と言わるのは昭和46年まで和歌山市には
路面電車が運行しており、拠点であった堀止周辺に屋台が多く並んだ名残である。

・井出系(豚骨味をベースにした豚骨醤油味)
味は前者に対して濃厚だが、決して脂臭くなく、豚骨の旨味が醤油とマッチする。全国的に有名な「井出商店」の製法であり、
TVチャンピオンのラーメン選手権における優勝、横浜ラーメン博物館への出店などによってこのスタイルが全国区となった。東京でも有名になった「のりや」や「まっち棒」もこの系統である。しかし、あくまでもこの系統は地元では少数派であり、比率でいえば前者が8、後者が2ぐらいの差がある。故に和歌山ラーメン=井出商店のようなスープという図式は大きな誤りであり、世間の認識と地元の認識に大きなズレを生む元にもなっている。


駐車場へ戻る途中、球場の前はちょっとした公園になっているので、そこで食後の休憩をする事にした。Oは「ぇあぁー」と奇声を発すると、まるでガキ大将のように芝生に勢い良く倒れ込んだので、我々も負けじと芝生に寝転んだ。TVドラマなどでよく見るこういうシーンは気持ちよさそうだが、実際はTシャツを通して刺さってくる芝生がチクチクと痛く、隣の芝生は青いならぬ真下の芝生は痛い状態であった。その後、背中の芝生を払いながら車に戻ると、観光名所「紀三井寺」に向かった。(9につづく…)


GWと和歌山と愉快な仲間達(7) [愉快な仲間達]

【4/30(月)】
翌朝AM10:00頃我々は目を覚まし始めた。しかし、「春眠暁を覚えず」布団にくるまってダラダラといつまでも起きないでいると、玄関の方で誰かが入ってくる音がした。その時私は直感した。オカンだと…!一応親には友人が泊まりに来る旨断っておいたのだが、気になってオトンと様子を見に来たらしい。その時、Tはトイレに行っており、Oは完全に布団と一体化していた(どちらが布団なのかOなのか見分けが付かない状態-もののけ姫のアシタカ状態-)。私とKは布団にくるまっていたものの目を覚ましていたので、オカンが入ってくるなり、立ち上がり挨拶した。その後、オカンはトイレの方に向かったのだが、Tもトイレ行っているので、あぁきっと鉢合わせするなぁと思っていると、廊下の方から声が聞こえてきた。
T「いやぁーこれはこれは。母上ですか!
   いつもS君にはお世話になっております!ハイ!」
ぇ?
母「あれあれご丁寧にどうも~」
T「いやほんとうに急にお邪魔してしまって申し訳ございません。ハイ!」ぇぇ??
母「そんな事ないですよ~。気にせずにゆっくりしていってね~」
謙虚やな~T!と感心するも一体昨日の威勢は何処に行ってしまったんですかい?その後、Tの後に戻ってきたオカンが我々全員を紹介してくれと言うので、
O=懐メロカラオケ達人で弁理士の卵。
K=彼女が社長令嬢だが最近結婚を迫られており、格差に悩んでいる某省事務官。
T=面白さNO1!の好青年で税理士の卵。
と紹介した。客観的に見ると、我々は何処からどうみてもまともな集団には見えるはずも無いので、箔を付ける為にわざと彼らのもう一つの顔であるいかめしい肩書きを付けて紹介したりした。オカンは「あれあれー。みんな名前は聞いた事あるわー。Sと仲良くしたってねー。あんまり友達いてないからー。などと言っていたが、小学生では無いのだからいい加減にして欲しいと思った(言っている事は遠からず当たっているが…)。その後、すぐにオカンとオトンが帰ったが、すっかり落ち着かなくなっしまった我々は、そそくさと帰り支度を終えると実家を後にした。Kの車中に乗り込むと昨日の「漁亭」方面に漁港を見に行く事に…。

【逢井(おおい)漁港】
逢井漁港は下のように、山間の北海道のような形をした扇状地(?)だが、外界と結ぶ道は車がようやく1台通れる程の細長いトンネル一本しかない。



対向車同士が擦れ違う時はどうするかというと、トンネルの真ん中部分だけ少し幅が広がっていて、そこで対向車があると待つ必要がある…。そんなところなので陸の孤島感が強い(私の中学時代の友人はこの町に住んでいたが、彼の弟は雨が降ったら学校を休んで近所のお年寄りとカマスを釣っていたという話を聞いた事がある)が、それ故都会の釣り好きにとっては穴場として有名なところだったりする。Kはトンネルに差し掛かった時「これってもちろん一通やよなぁ」と言いながら走っていたが、真ん中を超えた辺りで違うぞと言うと、ハンドルを持つ手が強張っていた(スマンK)。無事漁港に着くと、我々は浜辺に向かった。しかし浜辺に至るまでには、地面までかなりの高さがあるテトラポットの山を下っていく必要がある事が分かったので尻込みしていると、またしても元山岳部のOは嬉々として一人ピョンピョンとあっという間に浜辺に降り立ってしまった。地元民としてのプライドにかけて私も意地になってOの後を追い浜辺に着くと、いい大人のOと共に海に向かって小石を投げて飛距離競争をしたりした。おそらくテンションが上がっていたのだろう。



飛距離競争に夢中になっていてふと我に返り、嫌な予感がして振り返ると…子供を見守るような温かな目をしたTとKがニヤニヤしながらテトラポットの上から我々を見下ろしていた。少し気恥ずかしくなった私とOはまるで舟虫のように彼らの視線から逃れ、浜辺の奥の岩礁の方も散策する事にした。




<落ちたらヤバそう…>

少し見て回ってからOと戻ろうぜという事になり、さてどうやってさっきのテトラポットを登ろうかと考えていると、右横に小さな脇道らしきものが…。そのまま進むと、草がこんもり茂っていて少し見ただけでは分からないが足元はきちんと分け目になっていて道が続いている。もしやと思い登っていくと、あっさりとTとKのところに着いてしまった。そこで私は、ちゃんとした道があるんだからTとKも一度降りてみないかと誘うと、面倒臭いと一蹴されてしまった。私とOが楽しそうにしていたのでさてはヘソを曲げちゃったのかも知れないな…などと思いながら、わかったと返事をし再びKの車中へ。そろそろ昼食の時間だ…(8へつづく…)


GWと和歌山と愉快な仲間達(6) [愉快な仲間達]

【漁亭】
「漁亭」に到着し中に入ると、7、8人のカウンター席と襖で仕切られた座敷が3部屋あり、座敷の一室に案内された。漁亭の売りはタチウオ(地元の通称は「たっちょ」)。我々は早速タチウオの刺身を皮切りに次々と注文。Tはここでも唐揚げを忘れなかった。頼んだ料理はどれもおいしくてボリュームたっぷり。もちろん普段よりビールも進んだ。

<料理紹介>
タチウオの刺身


タチウオの骨揚げ(↑のオマケ)


タチウオ
(太刀魚、学名 Trichiurus lepturusreferred to Wikipedia -
スズキ目 サバ亜目 タチウオ科の。その外観が太刀に似ていることより、太刀魚(タチウオ)と名づけられたとする説がある(「刀」の字を取って「魛」と表記することもある)。また、通常、深さ 100m くらいの泥底に群生し、朝夕の薄暗い頃に表層に浮き上がり餌を狙って立ち泳ぎをし、頭上を通り過ぎる獲物に飛び掛って捕食する。このため立ち泳ぎすることより、立魚(タチウオ)と名付けられた説もある。

イカのバター炒め(食べかけでスミマセン…)


塩エビ(時価)

バタバタ


バタバタ  referred to Wikipedia -
ウチワエビ (団扇海老)の一種。ウチワエビはエビ目(十脚目)・セミエビ科・ウチワエビ属 Ibacus に分類されるエビの総称。
和名通りうちわのような平たい体型が特徴で、食用に漁獲もされている。体長15cmほどで、体は上から押しつぶされたように平たい。体の前半分が円盤形で、上から見ると和名通りうちわのような形をしている。水深300mまでの浅い海の砂泥底に生息する。成体に泳ぐ能力はなく、海底を歩行して生活する為、底引き網などで食用に漁獲される。新鮮な身は半透明の白色で、甘みと旨みがあり、刺身、塩茹で、味噌汁など様々な料理に用いられる。イセエビよりも小型で身も少ないが、味わいはイセエビに匹敵するかそれ以上とも言われる幻の食材。Tはこれが来た瞬間「カブト蟹やっカブト蟹や~」と騒いでいたが、店員のおばちゃんに「はいはいエビですよ~」と半笑いで窘められたりしていた。

ナガレコ


ナガレコ - referred to Wikipedia -
トコブシ Sulculus diversicolor supertexta (Lischke,
1870) (床臥・常節)の別名で、アワビの一種。クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビといった狭義の、大型のアワビの子供に似る。トコブシの名称は、海底の岩に臥したように付着している姿からつけられたと考えられている。肉は美味とされ、アワビと同様に食用にされる。塩蒸しや含め煮、缶詰などに調理される。ゴケンジョ(志摩地方)、ナガレコ、ナガラメ、アナゴなど。ナガレコやナガラメの系統の名称は、石を裏返して隠れているトコブシを露にすると、速やかに滑るように逃げ出す様が流れるように見えることから。ゴケンジョは「後家の女」の意で、平たい貝殻が二枚貝の殻に似ているにもかかわらず、1枚しかないありさまを夫を失った未亡人(後家)に例えたものである。

ガシラ(カサゴ)の煮付け 

終盤は食べるのに夢中だったので写真には撮れていないが(残念)、私は「ハモの天ぷら」が気に入った。Kは「ナガレコ」が気に入ったとのこと。(TとOは何が気に入ったのだろうか・・・)

<唐揚げ談義>
T「この唐揚げめっさおいしいわー。身がプリプリしとってボリュームたっぷりやしなぁ。
  俺が今まで食べた中でBEST3に入るわ!ハハハ」
O「他の2つって何?」

しばらく考えて・・・
T「そうやな。ケンタッキーと大学近くの食堂の唐揚げやなっ。」(←気を持たせた割に庶民的…)腹をさすりながら・・・
T「何か唐揚げの話してきたらもっと食べたくなってきたわ。もう一皿頼もうかなー。」
K「いやもう俺食べられへんでー」
S「結構ボリュームあるでー」
O「俺も無理やぞっ」
T「フンっ。何やお前ら。俺一人で食べるからええもんっ。すみませーん唐揚げもう一人前」
O「しかしT。いつも唐揚げばっかり食べてたら体に毒やないん?」
T「アホかっO。唐揚げはヘルシー食やで。牛とか豚よりはな!ハハハ」

O「・・・」
追加の唐揚げが到着したが、やはりTは食べきれない様子だった・・・そして
T「おいっS!特別に俺の唐揚げやるわ。KとOにはやらんからな。」とのこと。実は私もこの唐揚げは大変気に入っていたのでS「おー。しょーがないな。」と言いながら恩着せがましくTの唐揚げを平らげた。ナイスな料理に我々は気分が良くなり、座敷なのをいい事に合唱(音量小さ目に)したりした。Oは寝た体制で歌っていたが、おそらくテンションが上がっていたのだろう。歌い疲れたので、お開きにする事にし会計に行くと、大将に「沢山飲んでくれてありがとうなー。びっくりしたわー。」と言われた。私は「料理がおいしかったんで酒が進みましたよぉ」と言いながらも今まで飲み屋でそんな事を言われた事がなかったので相当の金額を覚悟していたのだが、一人5000円で済んだ(安いっ)。タクシーを呼んでもらいベロンベロンの我々は私の実家の近所のスーパーに。

【タクシー助手席で -酔っ払いTのご乱心- 】
T「いやーしかし今日は唐揚げ食べ過ぎたわー。あと一個食べとったら危なかったな。」
 我々「えっ何が?」
T「いやいや。危なく太るとこやったっていう事や。」
 K「いやいや太ってるやん。」
 運ちゃん「・・・?」
T「はぁ?太ってないわ!っていうか俺って全然太ってないやんか。」
 K「・・・」
 運ちゃん「・・・??」
T「危ないところやったわホンマに。」
 我々「・・・」
 運ちゃん「・・・???」

実家の近所のスーパーでタクシーを降りようと、私が料金を支払っている際にタクシーの運ちゃんが「いやー。あの人何者?おもろいなー。」と言ってきたので「実は芸人なんです。我々付き人なんです」等と酔いに任せて適当な嘘を言おうとしたが、普通に「彼は特別阿呆なんですよ。学生時代からのツレなんですが…」と返したのに、お釣りを財布に仕舞うのに手間取ったりしていると、「ほらほら早く行かなあの方が先に行ってしまうよー」などと完全に付き人扱いされて嫌な気分になったりした。その後、Tに事のあらましを語ってみたが、「当然や!」みたいな態度だったのでさらに嫌な気分になったりした。

【実家】
大量のビールとつまみを購入した我々は、私の実家へと戻った。私の家族は今は別の家に住んでいるので、気兼ねなく飲めや歌えやの大騒ぎ。子供部屋にオルガンを発見したOはBeati Mortui(死者に祝福あれ←しかしこの歌好きやな…)のパート練習を始め、Kが「全然できてねぇーよ。」などと叱責を受けたりしていた。おそらくテンションが上がっていたのだろう。私とTも「ぇああー次っ」などと呼ばれ順番に音が取れているか確認させられた。学生時代の一日12時間は余裕で歌う悪夢の合唱合宿を思い起こさせ、我々は総じて嫌な気分になったし、Kに至っては頭を抱えてうずくまったりしていた。しかし、Tは後で私に小声で「でもさぁ、Oはベースでテナー系の俺らの伴奏弾き間違えたりしとったから結構誤魔化せたよなっ」と凄く共感できる事を言ってきたりしていた(軽くKは人身御供状態?)。その後、仏間で合唱をひたすら続けながら酒を空けてしまうと、仏間の片隅にうずたかく積まれていた布団を引き寄せて我々は川の字になって就寝した。

【夜中】
ふと、目を覚ますと、Oが何かを怪談らしきものを語っていた。長年帰っていない家とは言え、私にとっては実家なので仏壇の前でも平気で寝れるが、皆にとっては築60年を余裕で超える家の仏間というのは不気味で眠れなかったらしい。Oがどんな話をしているのか耳をそばだてていると…O「でさぁ…トイレがさぁ…ビビるなよ…引き戸やねんっ」???声だけじゃないですか怖いのはっ!この時私は、Oはカラオケも上手いし、弁理士もいいけど案外声を使った商売も向いているのではないかと密かに思ったりしながら再び眠りについたのであった…。(7につづく…)

【漁亭 紹介ページ(住所が間違ってますが詳しいです)】

http://travel.kansai.com/column/index_050519.html


御食事処 漁亭



GWと和歌山と愉快な仲間達(5) [愉快な仲間達]

【鮎茶屋】
車中、私はOが長保寺の帰り際に門前で購入したミカンを1つ貰い食べようとしたが、上手く2つに割れずに果汁をGパンやKの車内(スマンK)やTのカバン(スマンT)にボトボトと垂らしてしまい取り乱したりした「空気とミカンはタダ」(親戚や知人から形が悪いミカンを沢山もらえる)という文化で育った元有田市民とは思えぬ失態だと密かに反省していると、車はいよいよ有田市に入った。そのまま国道を進み有田川を越えて左に折れ、川沿いに進むと「鮎茶屋」がある。



鮎茶屋は有田川で取れる鮎料理が食べられる温泉施設で、鵜匠を擁しての「鵜飼ショー」を主催している事でも知られている。鮎茶屋に到着し車を降りると、駐車場で何故か長淵剛の「乾杯」のインスゥルメンタルが流れており、「今日は長淵Dayかっ」などと口々に突っ込みつつ店内へ。

店内はスーパー銭湯のように広いわけではないが、清潔で店員の愛想も良かった。受け付けのカウンタの下ではまたもやラムネが売られており、いよいよTは「なぁSっ!ラムネって和歌山の名物なんか?」と本気で聞いてきたが、名物では無い旨丁寧に伝えました。浴場の内部は洗い場、内風呂、サウナ、露天風呂といったよくある構成だが、目を引いたのは露天にある桶風呂(一人用)である。先に入っていたおじいさんが出た後でOが入っていたが、なんだかOが桶に突っ込まれてぐでぇ~っと茹でられいるようで面白く、一人で笑いを噛み殺したりしていた。私は皆より一足早く風呂を出て、自販機で買ったアイスを舐めていると、続いてTも出てきた。長風呂派のKとOはなかなか出て来ず、私とTは長らく待たされる事になった。K「あぁー気持ちえかったー。サウナ最高!」O「ぇあ?待ったんか?わりぃな。」と二人とも気持ちよさうに出てきたので、私とTは「いや・・・」「別に・・・なぁ」「そうそう・・・」とまるでタカアンドトシが聞いたら「彼女かっ!」と突っ込みそうな変な気の遣い方をしてしまった。全く情けない話であるが、こういう時々「早く出て来いやー!どれだけ待たせるねんっ。」と気軽に(もとい爽やかに)言えないところが、私とTの繊細な所であり(?)、あまつさえそれが美徳だと互いに自負していたりもするので、我々は傍からみると仲が良いのか悪いのか良く分からない時もあるのかも知れない。

その後、湯上りの我々は一旦車を私の実家に泊めてから、旨いと評判の辰ヶ浜の飲み屋「漁亭」にタクシーで向かった。辰ヶ浜は有田川の河口(瀬戸内海)に面した漁業が盛んな町で、タチウオが沢山あがる漁港として知られている(和歌山県はタチウオの漁獲量 日本一)。有田川沿いを河口に向けてタクシーで進んでいく途中、西日が綺麗だったので、タクシーの運ちゃんに多少気兼ねしつつ写真を撮ったりした。(6につづく…)

 


【鮎茶屋】
http://www.arida.co.jp/

<鵜飼について - referred to Wikipedia ->


ペリカン目ウ科に属する水鳥である鵜(ウ)を使ってアユを獲る伝統的な漁法のひとつ。鮎茶屋で行われる鵜飼は和歌山県無形文化財第7号指定を受けている。鵜飼いの歴史は古く、『日本書紀』神武天皇の条に鵜養部のことが見え、『古事記』にも鵜養のことを歌った歌謡が載っている。また中国の史書『隋書』開皇二十年(600年)の条には、日本を訪れた隋使が見た変わった漁法として紹介されている。鵜飼漁で獲れる魚には傷がつかず、ウの食道で一瞬にして気絶させるために鮮度が非常に良い。このため、鵜飼鮎は献上品として殊のほか珍重され、安土桃山時代以降は幕府および各地の大名によって鵜飼は保護されていった。鵜匠と漁場の確保は、大名達にとっても面子に関わる一大事であったのである。しかしながら、鵜飼は決して漁獲効率のよい漁法ではないため、明治維新後に大名等の後援を失った鵜飼は全国から次々と姿を消していき、現在は数えるまでにその規模を縮小している。鵜飼いでは、平底の小船の舳先でかがり火を焚き、光に集まってきたアユをウに飲ませる。ウののどには紐が巻かれており、ある大きさ以上のアユは完全に飲み込むことができなくなっており、鵜匠はそれを吐き出させて漁獲とする。紐の巻き加減によって漁獲するアユの大きさを決め、それより小さいアユはウの胃に入る。鵜が口にした魚は噛まずに丸呑みにするため、人の言葉の真偽などをよく考えずそのまま相手の言葉を信じ込んでしまうという意の「鵜呑みにする」という言葉の起源ともなった。


GWと和歌山と愉快な仲間達(4) [愉快な仲間達]

【長保寺】
有田市に向かって南下中、海南市下津にて「長保寺」の看板が目に留まった。天台宗長保寺は紀州徳川家の菩提寺で紀州藩主15代の墓所として知られている(5代吉宗は8代将軍になった為除く)。歴史好き(?)の我々は、せっかく天気もいいので寄って行く事にした。徳川家康を勝手に自分の先祖と仰いでいる-おそらく冗談でだろうが-Tは「これっ秀忠!長保寺が俺を呼んでる気がするわ。ハハハ!」津川雅彦のモノマネをするなどテンションが上がっていた。看板の案内に沿って横道に折れ、蜜柑畑の山中をしばらく進むと長保寺が見えてきた。車を降りると、本当にいい天気で爽やかな風に乗って周囲の畑から仄かに蜜柑の香りが漂ってきた気がした。

 

 

拝観料300円を支払い伽藍を一通り見て回ると、廟所のある山中へ向かった。高校時代は山岳部にいたというOは坂道を見るなり軽快に走り去っていった。おそらくテンションが上がっていたのだろう。そんなOを追う形で我々も次々と廟所を回っていった。


<三代 綱教の墓所>


なぜ辰巳琢郎が…

<四代 頼職(よりもと)卿の墓所>

 
なぜ野口五郎が…

<二代 光貞卿の墓所>

なぜ大滝秀治が…

<初代 頼宣卿の墓所>



途中でOは墓に手を合わせた後、そのままの姿勢で後ろに下がったりしていたので何故かと聞くと「やっぱ偉いお方の墓やからさ。尻を向けたらダメだと思うんだ。」と柄にも無く殊勝な事を言っていた。少し感心すると同時に、既に尻を向けていた私はひどく罰当たりな気がした。
コースも終盤。上記頼宣卿の廟所を見た後、入り口に引き返そうとすると、Oが夫人廟も見たいと言ったので私とKはそれに賛成したが、Tの顔色が冴えない。「あぁー俺もうめっさ疲れた。限界や~。先に戻って休んどくわ。痒いっ蚊に咬まれたわー。カユイわー。」との事。徳川家が俺を呼んでるというさっきのテンションは何処に行ったんですかいっ?我々は夫人廟を見た後、受付に戻ると隣の茶屋のおじさんが「君ら。お供物食べるかー。」とドラ焼きをくれた。その茶屋では先に戻ったTがラムネを飲みつつくつろいでいた。我々は茶屋で少し涼んだ後、長保寺を後にした。門を出る際に、Oが「薫風の 長保寺 徳川の昔をぞ思ふ」とのたまったので「それ何処かに書いてたんか?」と聞くと、Oは「いや。俺が詠んだ。」とのこと。おそらくテンションが上がっていたのだろう。さすが文学修士と感心するも、Tは横から俺も出来たぞ「薫風の ラムネ ドラ焼き 長保寺」どうやっ!と対抗していたが、これは皆から絶賛されておりTもご満悦であった。長保寺を後にした我々は、有田温泉「鮎茶屋」に向かった。道中Tは思い出したようにこう言った、「そんで俺はドラ焼き貰わんかったんやけどなぁ。いやっまぁ別にええんやけどなぁー…」と言っていたがおそらくかなり気にしていたのだろう(5につづく…)

【佐藤春夫(和歌山出身) 望郷五月歌 より】
空青し山青し海青し
日はかがやかに
南国の五月晴れこそゆたかなれ

【長保寺】
http://www.chohoji.or.jp/


GWと和歌山と愉快な仲間達(3) [愉快な仲間達]

<海南IC~>
海南ICに到着し無事降りると、海鮮BBQを食べる為に「和歌山マリーナシティ」に向かった。岸和田ICからKのナビゲーションを引き受け、勢い込んで助手席に移った私であったが、何分ペーパードライバーで海南に住んでいたわけでも無いので、ナビに自信が無く、Kに「あっちやったかな?こっちやったかな?あでー?」などと言っていた。くしくもその時かかっていた曲は長渕剛の「キャプテンオブザシップ」

「ヨーソローオーヨーソローオォー・・・お前が舵を取れっ!」

長渕に励まされているようでなんだか心強く思えると同時に『しかしこれはナビに始まった事だけでは無いのかも知れぬ…俺の人生は果たして俺が舵を取っていると言えるのだろうか?』などと考えさせられりした。そうこうしている内に「和歌山マリーナシティ」への看板を発見し、進んでいる道でいい事が分かり安心していると、すかさずTが「おいっS!お前今ちょっとホッとしとるやろう。ハハハ。」などと人の心を見透かすような事を言ってきた。流石Tあなどれん。


<和歌山マリーナシティ>
途中TとOが「南国な感じやー南国やー。」「違うよなやっぱー。」などと感想を言っている内に
和歌山マリーナシティに到着。やはりGWの為、駐車場に入る為の順番待ちの車の数が凄い。海辺の広大な駐車場にも車がびっしり。

20~30分待たされた後にようやく駐車完了。Kもホッと一息。ポルトヨーロッパを横目に黒潮市場へ。


途中Tの大好物である唐揚げの屋台があり、Tは「あぁーくそー食べたいわぁー。いくらかな?」などと言っていた。BBQ店に行き場所を取ろうとすると、「2時間待ち」の札が…。変わり身の早さが売りの我々は、
「うんっ。BBQ止めようっ」
「そうやな」
「ムリムリ」
「Oっサザエ串食べとってよかったな」
などと口々に言いつつBBQを一瞬で諦めた。我々は食べ物を買いに、BBQ用の材料を買い求める客でごったがえす黒潮市場周辺に一旦散らばり、後で海辺で食べる事にした。私とOは一貫500円のトロの握りとマグロの刺身などを、TとKは先程の屋台で買ってきた唐揚げとフライドポテトをそれぞれ持ち寄って食した。KとOは「流石マグロの本場やっ」などと海を眺めながら舌鼓を打っていたが、Tは唐揚げを一番おいしそうに食べていたのを私は見逃さなかった。


それから我々は駐車場に戻り、私の実家のある有田市に向かったのであった。(4につづく…)

【和歌山マリーナシティ】
http://www.marinacity.com/


板前焼肉 一斗(天下茶屋本店) [焼肉]

前回に引き続いて焼肉の話題です。先日旨くて安いと評判の焼肉屋「黒毛和牛 板前焼肉 一斗」に行ってきたので紹介します。「一斗」は通天閣があるJR新今宮(地下鉄では動物園前)から南にいった少々ディープなところにあります。一斗までの道程はまるでそこだけ時代の流れから取り残されたかのようなレトロな下町が続きます。ホームレス達が沢山いて普通に道で寝そべっていたり、酒盛りをしていたりすのでビックリしないように覚悟して進む必要があります(←タクシーか他の線で行けよ)。

地下鉄動物園前から歩くこと十数分・・・無事到着しました。

 

独特の看板が目を引きますが、この町にはマッチしている感があります(←ダジャレ?)。

 

サッシの引き戸から中の様子を伺う事はできなかったので、恐る恐る開けてみると、
包丁片手の板前の兄ちゃんの顔がすぐ目の前に。

開けるところを間違えたようです…

兄ちゃんに正しい入り口を教えてもらい、気を取り直していざ店内へ。この店は料理用の肉も売っているようで、まず肉売り場があり、その奥が焼肉用のスペースになっていました。店の場所が場所だけにアウトローな店を想像していたのですが、予想に反して(←失礼な)、店員さんはみんな若くて愛想良く、店内も清潔でした。肉の値段は、ほとんどが700円~1500円ぐらいでリーズナブルでした。

<特上ロースと上カルビ>

焼肉の王道です。分厚くてジューシー。おいしかったです。

<生レバー>

 

前回の記事のいい生レバーの条件を満たしている感じです。790円は安いのでは。

<ミノサンド>

 

前回の記事でも紹介したミノサンドです。食べたのは例の本を読む前でしたが
「僕が今まで食べたミノで3本の指に入るぐらい美味いっ!(他の2本は不明ですが…)」
と思わずツレに叫んでしまうぐらいうまかったです。「サンドって何や?サンドって~」
などとと無知なる我々は言ってました。

<ユッケ>

よく見るユッケのような味は付いてなく、素材で勝負な感がありました。

<テッチャン>

脂が乗りに乗ってます。腸がピンク色なのは鮮度が良い証拠(例の本の知識)。

<限定地ビール 曽爾高原ビール>

ビールなのにフルーティな風味でした。

上記以外にも色々頼んだのですが、一人5000円でした。やっぱり安い。

【板前焼肉  一斗】
http://itamaeyakinikuitto.com/

↑チェーン店のようで他にも店舗があるみたいです。でもまたこの店に来たいです!何というか道々のスリルと店に着いた時の安堵感はここでしか味わえませんノデ(笑)。

板前焼肉一斗 天下茶屋本店


焼肉のことばかり考えてる人が考えてること 松岡大悟 [本紹介]

焼肉のことばかり考えてる人が考えてること

焼肉のことばかり考えてる人が考えてること

  • 作者: 松岡 大悟
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫


焼肉について最近感銘を受けた本を紹介します。読了後「焼肉について自分は何も分かっていなかった…」としばらくうな垂れてしまいました(←大ゲサな)。

私の焼肉に対して次のような固定観念があったのですが、見事に払拭されました。
・焼肉の美味さは良い肉かどうかよるものであり、焼き方とか関係ない
 関係無いから店員が焼かないし、口出しもしてこない
・肉はピンク色が消えるまで焼かないといけない
・ホルモンは普通の肉よりよく焼かないと危険

はじめに、筆者は「料理作業の一部(肉を焼く)を客が担当する」焼肉と他の料理の違いについて語り、焼肉の特殊性を訴えます。

例えば、
ステーキ店で客が肉を焼くか?
寿司屋で客が寿司を握るか?
ラーメン屋で客が麺を茹でるか?
例外的に関西のお好み焼き屋が挙げられるが、
名店と言われるところでは店側が焼くだろう?
 と…

言われてみれば全くその通り。今まで考えた事もなかった・・・
この本のざっくりとした要点は、以下の2点ですが、
①焼き技紹介
②肉についての知識

上記の例示で「焼肉における焼き方は重要なんだ」という心構えができ、①についてスムーズに受け入れられる体制ができます。このようにこの本では、たかが焼肉ごときの事で何を熱く語っているんだ」と、ともすれば一笑に付されがちな内容なのにも関わらず、論理性に富んでいるので非常に説得力があります。

「焼き技」としては以下のようなものが紹介されています。(オールマイティの焼き方は無く、部位により焼き方を合わせる必要があるそうです。)
・<七輪技>網ずらし
・<七輪技>網曲げ
・<七輪技>メリーゴーランド
・片面焦し
・3:7焼き
・レモンコート
・オイルドロップ
・包み焼き
          などなど
物々しいネーミングが焼く事の重要性をより訴えかけてきます。個々の説明はここでは控えますが、一言で言うと肉汁命ということです。以下に要点を纏めました。

・何回も引っくり返すべからず(2~3回マデ)。
・最初は強火で表面を焼いて肉汁を閉じ込め、
 あとは弱火で火を通しレアの状態にする。
(レアは肉の温度が50~60度ぐらいまで火が通っている状態の事を指すようです。だから赤くてもナマ肉とは違い火が通ったナマという言い方が適当なようです。60~70度がミディアム、70~80度がウェルダンだそうで、肉汁がもっとも多いのはレアの状態とのことです。)
・薄い肉は片面だけ焼くでもいい。
(ネギが乗ったタン塩などですね。両面きっちり色が変わるまで焼かないと と思っていた私は裏返した際にネギが網の下に落ちて、「どうやって食べんねん」とヤキモキしていたのですが、長年の疑問が氷解しました。)

次に②についてですが、ここでも目から鱗でした。
焼肉屋で出される肉は以下の2つに分けられるそうです。
正肉・・・加工処理を行ってから硬直が解けるまで、低温で保存する処理(熟成処理)が必要。
      冷凍しても味が落ちない。サシの入り具合等を基準に市場で格付けされている。
・ホルモン(内臓肉)・・・鮮度が命。基本的に加工処理の翌日店で出される。
                 なので実は焼ききる必要は無い。冷凍すると味が落ちる。
                 市場での格付けが無いので、いい肉を手に入れるには目利きが必要。
                 客の方でもいい肉なのかどうかを見抜く目が必要。

正肉は以下の肉を言うそうです。
「カルビ」…韓国語で「肋骨・アバラ」の意。肋骨周辺のアバラ肉・バラ肉のこと。
         味はこってり。焼肉に向く。
「ロース」…カルビ以外の正肉は全てロースとのこと。店によってどの部位をロースと
       言うかは異なるそうです。よく店で出されるのはモモやサーロイン部。
       味はあっさり。ステーキに向く

ホルモンの主なものは以下の通りです。(ホルモンは余り食指が動かなかったのですが、正体が分かると美味しそうに感じるので不思議です。)
「ハラミ」…横隔膜。正肉のイメージがあるが内臓肉に分類される。
「タン」…舌。BSEの影響で最近は価格高騰。
「ホルモン」…大腸。別名テッチャン、シマチョウなど。
「コプチャン」…牛の小腸。別名コテツ、ヒモ、ホソなど。
            管状のものを開かずに出すとマルチャン、マルチョウと呼ばれる。
            じっくり焼いた方がおいしい。2/3まで縮まったぐらいが食べ頃。
「レバー」…肝臓。レバ刺しが人気。いいレバ刺しは小豆色。通常はスライスだが
         ブツ切りもオススメ。ただし鮮度のいいものしかできない。
         血が出てきているのは鮮度が悪いもの。当たり外れが大きい。脂肪肝
         にあたればすごいラッキーとのこと(病気がいいってフォアグラみたいですね)。
「ハツ」… 心臓。別名「ココロ」。常に運動している部位なので当たり外れが少ない。
        冷凍すると味が落ちる部位ナンバーワン。  
「ツラミ」…頬肉。
「テール」…尾。

<牛の胃>…牛には胃が4つある。第一胃からミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ。
「ミノ」…
第一胃なので最も大きく、硬い。隠し包丁を入れる必要あり。上質のものは
      分厚い。和牛は過保護(食物がやわらかい)なのでいいミノが取れないが、希少部位の
     「ミノサンド」が取れる。ミノサンドはミノの片隅にできる脂肪をサンドイッチした
     ような部分。  
「ハチノス」…ナマではとても食べられないぐらいに硬いので、仕込みの段階で何時間も煮ている。
         硬くなるので焼き過ぎないようにする。あぶる、炒める程度がよい。
「センマイ」…ヒダが千枚あるように見えるところからこの名がついた。片面焼きなど
          あまり焼かずに食べた方がおいしい。
「ギアラ」…別名「赤センマイ」。これもあまり焼かずに食べた方がおいしい。

<豚肉>…ホルモンだが牛と違い細菌の関係からじっくり火を通す必要アリ。
「トントロ」…
別名「ピートロ」。首から肩にかけての肉。
「コブクロ」…子宮。例外的に刺身でもOKの部位。経産ものの方がおいしいらしい。
「ガツ」…胃。ミノと食感がよく似ている。
「シロ」…大腸。別名「豚ホルモン」。

その他、焼肉を楽しむ為のウンチクが満載の本です。何より「どーでもいーやん」という事に(←失礼な)徹底してこだわる姿勢に好感が持てました。焼肉によく行く方にオススメの本です。また、同著者で「回転寿司の掟」なども出ているようなのでこちらも是非チェックしたいところです。

回転寿司の掟

回転寿司の掟

  • 作者: 松岡 大悟
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2004/08/19
  • メディア: -


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。